茨城フラワーパークで見つけた、小さくて可愛らしい苗。
名札には「シュークリーム」とあり、その名に違わず、淡い黄色の小ぶりな花がとても愛らしくて、私はすっかり心を奪われてしまいました。
鉢植えにして、毎年せっせとミニバラとして手入れをしてきました。
ところが──咲けば咲くほど不思議なことに気づきました。
花は妙に大きく、整った高芯剣弁。
香りはほのかで、姿はどこか気品がありました。
「ミニバラなのに、なんでこんなに切り花っぽいの?」という疑問を抱きながらも、その不思議な魅力に惹かれ続けていました。
目次
調べてわかった衝撃の正体
毎年大切に育てていたのに、どうしても冬越しできず枯れてしまう。
その理由を突き止めたくて、調べに調べて──ついに見つけたのが、
農林水産省の「品種登録データベース」でした。
そこに記されていた事実は、私の想像を超えていました。
- 作出者:斎藤治一氏(群馬県富岡市)
- 出願番号:第11335号(1998年出願)
- 登録番号:第10206号(2002年登録)
- 用途:切り花用ハイブリッド・ティー(HT)品種
- 育成者権の満了日:2027年3月25日
つまり私は、ミニバラじゃなくて切り花品種HTを、小鉢で育てて枯らしていたというわけです。
──そりゃ失敗しますよね。
シュークリームは“とても難しい子”だった
この事実を知ったとき、私は思わずこう呟いていました。
「シュークリームって、“とても難しい子”じゃん」。
その可愛らしさとミニマムな姿で油断させ、咲けば豪華な高芯剣弁。
それでいて実は切り花用、流通はごく少数、さらに2027年には育成者権の保護期間も終了。
そんな薔薇、そうそうあるものじゃありません。
私がたまたま出会って、たまたま育てて、たまたま枯らしてしまった薔薇が、
まさかそんな“幻の品種”だったなんて──これも何かの縁なのかもしれません。
育て、記録し、次代へ
あと2年で、このバラは正式に“保護期間の終わった品種”になります。
今からでも、記録して、伝えて、残していく価値があると私は思います。
今、もう一度あの苗を探しています。
次は、ミニバラではなく“とても難しい”HTとして育てるために。