こんにちは、ブログ主のエンゼル佐藤です。
少女漫画の金字塔といえば、池田理代子氏による歴史ロマン『ベルサイユのばら』。フランス革命を少女漫画として大胆に描き、日本だけでなく世界中の読者を魅了し続けている作品です。
筆者の世代では『ベルばら』ブームは少し上の世代で、自分の青春時代には『キャンディ・キャンディ』がタイムリーでしたが、ベルばらの魅力には今なお心を惹かれます。
しかし、今回の記事では『ベルサイユのばら』に隠された**“時代考証の盲点”**を掘り下げていきます。
⚠️ 注意! 本記事はあくまで歴史的事実に基づいた考察であり、決して作品を貶める意図はありません。『ベルばら』の夢を壊されたくない方は、ここでブラウザを閉じることをお勧めします。
それでは、本題に入りましょう。
『ベルサイユのばら』の背景とあらすじ
『ベルサイユのばら』は、1972年から1973年にかけて『週刊マーガレット』(集英社)に連載された少女漫画です。舞台はフランス・ブルボン王朝末期。ルイ16世の治世下で、フランス革命へと突き進む時代を描いています。
この物語の中で中心的な存在となるのが、
- マリー・アントワネット(実在の人物)
- オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ(架空の人物)
オスカルは1755年12月25日に生まれたという設定ですが、偶然にもマリー・アントワネットも同年11月2日生まれ。彼女たちは同い年ということになります。
フランス革命が勃発する1789年、34歳となったオスカルは運命に導かれるように革命の激流に身を投じます。
そして、その**象徴として作中に登場する「薔薇」**が、実は大きな歴史的矛盾を孕んでいるのです。
“ベルばらの薔薇”は時代錯誤?——モダンローズ誕生前の世界
『ベルサイユのばら』の作中には、印象的なシーンでしばしば**「高芯剣弁咲き」の美しい薔薇**が登場します。オスカルが咥える赤い薔薇、アントワネットが手に持つ白い薔薇……。
しかし!
実はこの「モダンローズ(HT=ハイブリッドティーローズ)」という品種は、フランス革命時代にはまだ存在していなかったのです!
モダンローズの誕生は1867年
現在、日本人が「薔薇」と聞いて思い浮かべる花の多くは「モダンローズ」と呼ばれる品種に属します。その始祖となるのが、
1867年にフランスの育種家 ジャン=バプティスト・アンドレ・ギヨー・フィスが作出した『ラ・フランス』
なのです。
下の画像が「ラ・フランス」になります。
フランス革命(1789年)から数えると、実に78年後の誕生!
つまり、革命時代にはあのような美しい高芯剣弁咲きの薔薇は存在しなかったことになります。
それ以前に育てられていたのは、いわゆる**「オールドローズ」**と呼ばれる品種で、
- 花弁が多く、
- 芍薬や牡丹のような咲き方をする、
- 一季咲き(春しか咲かない)
といった特徴を持っていました。
実際にマリー・アントワネットの肖像画に描かれている薔薇を見てみると、現在のモダンローズとは全く異なる形状をしていることがわかります。
丸い牡丹か芍薬みたいな花の形だとお分かりいただけるかと。
「ベルばら」の薔薇、もし時代考証に忠実なら…?
もし、池田先生が時代考証を完全に再現していたとしたら、
- オスカルが咥える真紅の高芯剣弁咲きの薔薇は牡丹のような丸い花になり、
- アントワネットが愛でる白薔薇も、豪華でふっくらとした咲き方をしていたでしょう。
うーん……なんかイメージが違う……。
オスカルが牡丹のような薔薇を咥える姿を想像すると、どうしても“あの名シーン”の雰囲気が崩れてしまいますね。
時代考証 vs. 漫画的演出——どちらを取るか?
とはいえ、『ベルサイユのばら』はあくまで「少女漫画」。
美しく華麗な世界観を演出するために、当時存在しなかったモダンローズを描くのは、ある意味「必然」だったのかもしれません。
歴史的な正確さよりも、
「いかに読者を魅了するか」
が重視された結果、現在の私たちが知る**「ベルばらの世界」**が生まれたのです。
まとめ:ベルばらの薔薇は時代錯誤だった!?
✅ モダンローズ(高芯剣弁咲きの薔薇)は、1867年に誕生した!
✅ フランス革命(1789年)の時点では、モダンローズは存在しなかった!
✅ 当時の薔薇はオールドローズで、花の形が牡丹のようにふんわりとしていた!
✅ しかし、『ベルサイユのばら』の美しい世界観を作るためには、モダンローズの演出が不可欠だった!
『ベルばら』は、現代の私たちが思い描く「フランスの華麗な宮廷文化」と「革命のドラマティックな世界」を、最も美しい形で表現した作品なのです。
時代考証に忠実であったなら、この漫画はここまでの名作になっていたでしょうか?
きっと、私たちが愛する『ベルばら』の魅力は、「歴史」と「少女漫画の夢」の絶妙なバランスの上に成り立っているのかもしれませんね。